【麻布大学と共同研究】 毎日のえごまオイルの摂取が「産後うつ」を予防する可能性を発見 |
この度、当社と麻布大学(学長:川上泰、本部:神奈川県相模原市)及び独立行政法人地域医療機能推進機構 相模野病院(神奈川県相模原市)の研究グループは、女性の産後のメンタルヘルスとさまざまなオメガ3系脂肪酸(※1)の摂取の関係性に関する観察研究および介入研究を行い、妊娠中にえごまオイルに含まれるα-リノレン酸(※1)を摂取することで産後のメンタルを安定させる可能性を見いだしました。
本試験結果は、1988年にえごまオイルを日本で初めて食用化し、えごまオイルのパイオニアとして長年研究してきた当社の成果である以上に、近年伸長する健康油の市場において、日本が抱える少子化などの社会問題解決を、食を通じ解決を探る新たな糸口となりうる発見であり、その社会的意義は高いものと考察致します。
本研究成果は2023年10月13日、栄養学に関する学術誌Nutrientsに掲載されました。
麻布大学とは、2018年6月に「機能性脂質学研究室」を開設し、同学 生命・環境科学部 食品栄養学研究室の守口徹教授、原馬明子特任教授を中心とし、周産期から老年期までの全てのライフステージにおける機能性脂質の役割の解明など栄養学的な基礎研究を行っています。
<研究のポイント>
・世界的な調査で、妊婦の10~20%が産後うつを経験していると報告されています。
・オメガ3系脂肪酸を多く含むえごまオイルや魚油を妊娠中の女性に12週間摂取してもらい、
産後1ヶ月時に母親の産後うつ状態に関するメンタルヘルススコアを調査しました。
・オメガ3系脂肪酸の一種であるα-リノレン酸を多く含むえごまオイルを摂取した群では、産後うつに
関するメンタルヘルススコアが一般的なスコア(historical control: 既存試験において得られたデー
タ)に対して、産後うつのリスクを半減させるという良好な値を示しました。
<背景と目的>
日本でも、ライフスタイルの変化に伴い、産後うつなどの周産期(妊娠期から授乳期)のメンタルヘルスの予防が課題となっています。
胎児の発育のために、妊娠前からのサプリメントとして葉酸は広く認識されていますが、実は、母親は胎児の脳の成長のために、胎盤や母乳を介して十分量のオメガ3系脂肪酸(DHA)とオメガ6系脂肪酸(アラキドン酸)を供給しなくてはなりません。特に、オメガ3系脂肪酸を含む食材は魚介類や一部の植物油に限られるので、母親の摂取量が少ないと新生児の成長・発達だけでなく、母親自身の脳機能に影響を与え、メンタルヘルスが不安定になると考えられます。
そこで、妊娠中にオメガ3系脂肪酸を摂取した母親のメンタルヘルスへの影響を検討しました。
<結果と考察>
脂肪酸研究では、魚介類のEPAやDHAに着目した検討は多くありますが、植物油由来のα-リノレン酸を評価したものは世界でも少数です。今回、妊娠中期から後期にかけて12週間、えごまオイルを摂取した群で産後のメンタルヘルススコアが良好となりました。
また、症例対照研究でも、母親の赤血球中のα-リノレン酸が低いと産後のメンタルヘルスが不安定になる関係を示しました。
この試験は、出産と育児の経験のない初産婦250名を対象に、現在の妊婦の状況を把握する観察研究と、2種類のオメガ3系脂肪酸摂取していただく介入試験を組合わせて実施しました。
近年の世界的なオメガ3系脂肪酸の摂取不足が問題となっている中、日本人は魚食民族としてEPAやDHAは世界の中でも多く摂取していると思われていましたが、日本も例外ではなく、今回測定した妊婦の赤血球Omega-3 index(EPA+DHA)は低く、オメガ3系脂肪酸の摂取状況が欧米並みになっていることがわかりました。
また、新しい生命を育む周産期の母親の健全なメンタルヘルスの維持にえごまオイルに含まれるα-リノレン酸の必要性が明らかとなった重要な結果であると考えています。
えごまオイルに含まれるα-リノレン酸は母体のメンタルヘルスに、魚油は優先的に胎児への供給にと、妊娠中では別々の役割を果たしている事も分かりました。今後の研究において、各油脂の代謝産物や生理活性物質を測定し、メカニズムを検討することで、さらに新しい発見が期待できます。
また、魚介類にアレルギーをお持ちの方、水銀などの重金属に不安をお持ちの方、悪阻などで生臭いにおいが苦手の方、動物性食品に抵抗のある方などは、えごまオイルでしたら安心です。日本の妊婦も自身のメンタルヘルスの安定と胎児へのDHA供給のために、葉酸と同様にえごまオイルの摂取を意識してもらいたいと考えています。
※1 オメガ3系脂肪酸とは、体のさまざまな機能に必要な脂肪酸の一種で、えごまオイルやアマニ油に多く含まれるα-リノレン酸(ALA)や、魚介類に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)がある。体内で合成されないため、食物から摂取する必要がある。
今後も、えごまオイルのパイオニア企業として、その有用性の検証をさらに進め、えごまオイルを通じ、世界を健康で笑顔にするために新たな価値を創造し続けていきたいと考えています。
<掲載論文>
論文名:Effects of Varied Omega-3 Fatty Acid Supplementation on Postpartum Mental Health and the Association between Prenatal Erythrocyte Omega-3 Fatty Acid Levels and Postpartum Mental Health
和訳:産後のメンタルヘルスに対するさまざまなオメガ3系脂肪酸サプリメントの効果、および出生前赤血球オメガ3系脂肪酸レベルと産後のメンタルヘルスとの関連性
掲載誌:Nutrients
著者:Akiko Harauma, Hajime Yoshihara, Yukino Hoshi, Kei Hamazaki and Toru Moriguchi
DOI:10.3390/nu15204388
URL:https://doi.org/10.3390/nu15204388
◆本件に関するお問い合わせ先 太田油脂㈱ マーケティングチーム 久島 住所:〒444-0825愛知県岡崎市福岡町字下荒追28 TEL: 0564-51-9944 FAX:0564-51-1197 |